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『FINE DAYS』を読んで · 読書感想・書評

親になる前の父を知る――『FINE DAYS』本多孝好

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タイトルと表紙に惹かれて

この本を手に取った詳しいきっかけは、もう覚えていない。ただ、『FINE DAYS』というタイトルと表紙に惹かれたのだと思う。

明るく爽やかな話を想像させるタイトルだけれど、実際に収められている物語は、それほど単純ではない。「イエスタデイズ」「眠りのための暖かな場所」「FINE DAYS」「シェード」の4編からなる短編集で、どの物語にも現実から少し外れた不思議な出来事が入り込んでいる。

4編のなかで、いまも最も印象に残っているのは「イエスタデイズ」である。

若い頃の父と出会う

「イエスタデイズ」の主人公・聡史は、余命わずかな父から、昔の恋人を捜してほしいと頼まれる。父が残したスケッチブックを手がかりに、かつて彼女が暮らしていたアパートを訪れると、そこで待っていたのは、若い頃の父とその恋人だった。

現実にはあり得ない出来事なのに、読み進めていると、その不思議さよりも、父と息子の関係のほうが気になってくる。

聡史は、父に対して初めから温かな感情を抱いていたわけではない。むしろ父を嫌い、理解できない人間として見ていた。ところが、自分が生まれるより前の父を知り、父にも若い時代があり、恋をし、迷い、思うようにならない人生を生きていたことを知っていく。

子どもにとって、父親は最初から父親である。

しかし当然ながら、その人は父親になる前から生きている。若い頃があり、誰かを好きになったことがあり、選ばなかった道や諦めたものもある。頭では当たり前だと分かっていても、普段はなかなかそこまで考えない。

僕が知っている親の姿も、その人の長い人生の一部分にすぎないのだと思う。

過去を知っても、すべてが許せるわけではない

親の過去を知ったからといって、それまでのわだかまりがすべて消えるわけではない。傷ついたことがなかったことになるわけでもないし、急に理想的な親子関係へ変わるわけでもない。

それでも、相手を見る角度は変わるのかもしれない。

もちろん、事情を知ることと、すべてを肯定することは違う。

この物語を読んで心に残ったのは、時間を越えるという仕掛け以上に、親子のすれ違いと、残された時間の少なさだった。

できることなら、親が元気なうちに、もっと昔の話を聞いておいたほうがいいのだろう。何が好きだったのか。どんな仕事をしたかったのか。誰と出会い、どんなことに悩んでいたのか。

ただ、実際には照れくささもあるし、改まって尋ねる機会もなかなかない。そのうち聞けばいいと思っている間に、聞けなくなることもある。

その残酷さも、この物語の奥には静かに流れている。

切なさのあとに残る温かさ

失われたものは戻らない。誰かと過ごせる時間にも限りがある。そうした切なさは確かにあるのだけれど、読後に残るのは絶望だけではない。

明るさだけを描いた物語ではない。それでも『FINE DAYS』というタイトルが、読み終えたあとには不思議と似合っている。

この本の切なさの奥には、そんな温かさが残っていた。

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