『生物と無生物のあいだ』福岡伸一|生きていることが奇跡に思えてくる
この本を手に取ったのは、当時話題になっていたからだった。生命科学に特別詳しかったわけではないけれど、読み始めると、生命というものの不思議さに引き込まれていった。
福岡伸一の『生物と無生物のあいだ』は、「生命とは何か」という問いを、分子生物学の研究や科学者たちの発見を通して考えていく本だ。
専門的な内容を扱いながらも説明はわかりやすく、研究者の好奇心や探究心が伝わってくる。単に知識を教えるのではなく、読んでいるこちらにも次々と疑問が生まれてくるところが面白かった。
変わり続けているのに、同じ自分でいる
特に印象に残ったのが「動的平衡」という考え方だった。
私たちの身体を構成する物質は、絶えず分解され、新しく作られ、入れ替わっている。それでも生命は一定の秩序を保ち、同じ個体として存在し続けている。
生命は、完成された機械のように固定されたものではない。変化し続けることで、その状態を維持している。
この考え方には、科学的な面白さだけでなく、哲学的な奥深さも感じた。
変わり続けているのに、なぜ同じ自分なのだろう。
生命を単なる部品の集合として捉えるだけでは、説明しきれないものがあるように思えた。
なぜ、今日も生きているのだろう
読み進めるうちに、面白さとは別の感情も生まれてきた。
少し怖くなったのだ。
激しく身体を動かしても、眠って朝を迎えても、私たちは何事もなかったように生きている。
心臓は動き続け、呼吸をし、身体の内部では無数の生命活動が進んでいる。そのほとんどを、自分の意思で操作しているわけではない。
それなのに、なぜこれほど複雑な仕組みが、休むことなく働き続けられるのだろう。
普段なら疑問にも思わないことが、急に不思議で仕方なくなった。
生きている状態が維持されていること。その均衡が崩れれば、生命は終わりを迎えること。
科学的な仕組みを知ることで安心するどころか、生と死の境界を意識するようになった。
この本を読んでから、何気ない日常の中で、ふと生きていることそのものを不思議に思う瞬間が生まれた。
この記事で扱った本
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