暇だったから作ってみた。それが今も使われている――『仕事は楽しいかね?』を読んで
仕事で使っていた、あるサービスが値上げした。
便利ではある。ただ、新しい料金を払ってまで使い続けるかと考えると、少し迷う。
代わりになるサービスを探す手もあった。
けれど、そのとき最初に浮かんだのは、別の選択肢だった。
「これ、自分で作れないか?」
そこで紙を1枚出し、そのサービスが何をしているのかを書き出してみた。
画面や機能をそのまま再現しようとしたわけではない。自分たちが実際に使っている部分だけを拾い、できるだけ単純な流れにして、紙の上へ並べていった。
入力したものが、どこへ渡り、最後に何が出てくればよいのか。
流れにしてみると、立派に見えていたサービスも、必要な部分だけなら自分で作れるような気がしてきた。
その日のうちに、試作品を作り始めた。
十分に検討したわけではない。社内で長く使う計画があったわけでも、完成させる見込みがあったわけでもない。
単に、少し暇だったのだ。
「できるかもしれない」と思ったので、やってみた。それだけだった。
ところが、作ったものはそのまま社内で使われるようになった。
しかも、自分たちで作ったものだから、使い方に合わせて変えられる。別の場面でも使えそうだと思えば、少し手を加えて派生版を作ることもできた。
値上げされたサービスの代わりをひとつ作ったはずが、いつの間にか、別の用途へ横に広がっていた。
最初に企画書を書き、必要性を検討し、将来の展開まで予測していたら、おそらく始めていなかったと思う。
見込みがないからだ。
どれくらい使えるのか分からない。完成までに何時間かかるのかも分からない。途中で面倒になり、放り出すかもしれない。
それでも始まったのは、成功する理由があったからではない。失敗しても大したことはない状況で、たまたま手を動かす時間があったからだ。
まず、試してみる
デイル・ドーテンの『仕事は楽しいかね?』は、目標を立て、そのとおりに進むことだけを成功への道とは考えない。
まず試してみる。結果を見て、また変える。その繰り返しの先に、最初には想像できなかったものが生まれる。
この本を読んだとき、思いつきで始めてしまう自分のやり方も、そう悪いものではないのだと思えた。
予定の外から始まる
私はもともと、予定どおりに物事を進めることが得意ではない。
仕事中に不便や矛盾を見つけたとき。風呂や移動中に、別のことを考えているとき。気楽な知人と雑談しているとき。
突然何かを思いつき、予定になかったことを始める。
計画的な人から見れば、ずいぶん行き当たりばったりに映ると思う。実際、そのまま何にもならずに終わるものもある。
ただ、始めなければ、使えるかどうかさえ分からない。
何でも大きな決断にしてしまうと、費用や時間や成功の見込みを考え、動けなくなる。試作品ひとつなら、もっと気軽でいい。
紙に流れを書いてみる。少しだけ作ってみる。動かなければやめる。意外に使えそうなら、続きを作る。
そのくらいの軽さで始めたものが、あとから仕事の一部になることもある。
結果はあとから分かる
いまも社内で使っているその道具を見ると、少し不思議な気がする。
始めた日にあったのは、明確な目標でも、成功の確信でもなかった。
値上げへのためらいと、1枚の紙と、少しの暇だけだった。
だからこそ、何でも試してみるべきなのだと思う。
良い思いつきかどうかは、思いついた瞬間には分からない。
手を動かしたあとで、ようやく分かる。
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仕事は楽しいかね?