「ひどかった」と言いたくなる一冊――乙一『ZOO 1』を読んで
『ZOO 1』は、知人に強く薦められて読んだ。
どの短編で何が起きたか、今ははっきり覚えていない。それでも、読んだときの怖さは残っている。本を読んで、ここまで怖いと思ったのは初めてだった。
読み終えた感想を一言にするなら、「ひどかった」。語彙がなくなるほど怖く、暗かった。
文章から映像が流れ込んでくる
文庫版には5つの短編が入っている。たとえば「カザリとヨーコ」では、双子なのに一方の少女だけが母親から虐待される。「SEVEN ROOMS」では、姉と弟が何者かに監禁される。
設定だけを見ても、安心して読める話ではなさそうだ。けれど、怖さの中身はあらすじから想像する以上だった。
残酷な出来事に身構えながら、次に何が起こるか分からない緊張感が続く。読むのをやめたくなるのに、先が気になってページをめくってしまう。
何より強烈だったのは、文章から情景が頭の中に鮮明に浮かぶことだ。見たくない場面まで、映像を送り込まれるように見えてしまう。怖さから目をそらしたいのに、そこにあるものがはっきり伝わってくる。
各話の筋は忘れていても、その感覚だけは薄れない。自分の頭の中で見てしまったものは、簡単には消えないのだと思う。
つらいのに、面白い
もちろん、ただ怖いだけなら、途中で本を閉じていたかもしれない。
どんな発想をしたら、こんな話になるのか。どう決着するのか。嫌な予感を抱きながらも、その答えを知りたかった。情景を浮かび上がらせる文章にも圧倒された。
人に薦められて食べた激辛ラーメンを、「めちゃくちゃ辛かったけど、旨かったね」と振り返る感覚に近い。食べている間はつらい。なのに、食べ終わると、その強烈さを誰かに話したくなる。
『ZOO 1』を読んだあと、乙一のほかの作品にも手を伸ばした。あれほど怖い思いをしたのに、次はどんな話を読ませるのか気になったのだ。
「ひどかった」は、薦めてくれた知人に言いたくなる率直な感想だ。でも、その言葉には、こんなに鮮烈な読書体験があるのかという驚きも入っている。
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ZOO 1