『カルロス・ゴーンの「答えは会社のなかにある」』を読んで · 読書の記録・仕事の経験
「ゴーンさん、ゴーンさん」と呼んでいた人――『答えは会社のなかにある』
「ゴーンさん、ゴーンさん」
仕事で知り合ったある技術者が、カルロス・ゴーンについて話すとき、そう呼んでいた。
かつてゴーンのもとで働いていたというその人は、車づくりに携わっていた。名前を口にするときの調子が穏やかで、尊敬と懐かしさが入り混じっているように感じた。
経営者についてのニュースを論評しているのではない。自分の仕事を変えてくれた上司の話をしている。僕には、そう聞こえた。
その記憶があって、『カルロス・ゴーンの「答えは会社のなかにある」』を読んでみたのだと思う。
改革された会社の中にいた人
本で印象に残ったのは、古い慣習を壊しながら会社を変えていく姿だった。
改革は外から見ると数字や成果として語られる。けれど、あの技術者にとっては、自分が働く環境が変わったという、もっと具体的な経験だった。
その人は、改革で仕事の環境がよくなったと話していた。車そのものへの愛情も感じられる話しぶりだった。
同じ経営者でも、ニュースで見る顔と、そこで働いた人が覚えている顔は違う。
どちらか片方だけで判断できるのか
ゴーン氏が後にニュースを賑わせるより前に、その人と話したのか。それとも後だったのか。時期ははっきり覚えていない。
世間での評価がどう変わろうと、あの人が仕事で受けた恩や、実際に感じた変化が消えるわけではない。
もちろん、ある部下の見た姿が、その人物のすべてでもない。
世間に知られた側面も、その人が仕事を通じて見た側面も、どちらか一方だけで全部を説明することはできない。
簡単に一つにはまとめられない。
結局、この本でいちばん鮮明に覚えているのは、経営手法の細部ではなく、一人の技術者の声だった。
「ゴーンさん、ゴーンさん」
あの親しげな呼び方には、あの人にしか分からない仕事の記憶が入っていたのだろう。
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カルロス・ゴーンの「答えは会社のなかにある」