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『ラッシュライフ』を読んで · 読書感想・書評

人物を追い、時間を並べ直す――伊坂幸太郎『ラッシュライフ』を読んで

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『ラッシュライフ』を読んでいたときは、ずいぶん頭を使った記憶がある。

泥棒の黒澤、仕事を失った豊田など、境遇の違う人物の話が入れ替わりながら進む。誰がどこにいたかを追うだけでは、話の全体が見えてこない。

時間の順番を考える

今読んでいる出来事が、さっきの場面より前なのか後なのか。気になってページを戻り、人物ごとの出来事を頭の中で並べ直した。

街で人々が書き込むスケッチブックや、犬の首輪といったものも、別々に見えた場面の順番を考える手がかりになる。

同じ出来事を見ているつもりでも、順番が分かると意味が変わる。読み終えてからも、もう一度確かめたくなった。

仕掛けを追うには集中力が要る。けれど、読んでいる自分も組み立てに参加しているようで、その手間が楽しかった。

豊田と犬のこと

複雑な構成とは別に、豊田と犬のことも残っている。

職も家族も失った豊田が、危害を加えられそうになった犬を助け、一緒に行動するようになる。自分の暮らしさえ危ういときに、犬を放っておけなかった。

人物や時間を追うのに頭を使いながら、豊田と犬の場面では少しほっとした。その感覚も、この本の記憶の一部だ。

一方、黒澤は泥棒として、豊田とはまったく違う場所から物語に入ってくる。それぞれの話が交わるたび、先に読んだ場面の意味が少しずつ変わった。

『死神の精度』でも話のつながりに感心した。『ラッシュライフ』では、さらに時間の順番まで自分で組み直しているようだった。

ページを戻して考えたことと、豊田と犬に感じた小さな救い。仕掛けの面白さだけでは終わらないところが、今も印象に残っている。

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