『死神の精度』を読んで · 読書感想・書評
前のページに戻りたくなる――伊坂幸太郎『死神の精度』を読んで
伊坂幸太郎さんの『死神の精度』で印象に残っているのは、一つひとつの話が、読み進めるうちに違う見え方をしてくることだ。
別々の話として読んでいたはずなのに、人物や出来事に見覚えを感じる。気になって前のページに何度か戻り、確かめた記憶がある。
少し変わった死神
主人公の千葉は、人の死について判断を下す死神だ。調査相手のそばで1週間を過ごし、その人の生死に関わる仕事をする。
仕事の内容は重い。それなのに千葉自身は音楽に夢中で、人間との会話も少しずれている。
死神という言葉から恐ろしい存在を想像していたら、その受け答えでふっと力が抜ける。重い話の中に、この軽さがあるのも面白かった。
本には、千葉が異なる人物と出会う6つの話が収められている。初めは、それぞれの人の話をひとつずつ読んでいる感覚だった。
離れた話がつながる
読み進めると、別々だと思っていた話の間に、つながりが見えてくる。どこかで読んだ名前や出来事が気になり、前に戻りたくなる。
最後の老女の話まで来ると、前に登場した人物の時間が、思いがけない形で見えてくる。
千葉にとっては仕事の一件でも、その人の人生はそこで終わらない。後の時間を知ってから振り返ると、最初に読んだ話まで少し違って見える。
読んでいる間に過ぎた時間と、登場人物の人生の中で過ぎた時間は違う。最後にその長さを感じて、前の話との距離まで変わった気がした。
当時、どの箇所でページを戻したかは覚えていない。ただ、何度か行き来して読み、つながりを確かめたことは覚えている。
話の順番や距離を使って、読者の見方まで変えてしまう。そんな構成に「さすがだな」と思った一冊だった。
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死神の精度